MENU

波田野州平/大館市立第一中学校

27hatano01日時・参加者
平成27年11月24日 477名/全校生徒
内容
2013年に大館市にレジデンスしながら、同校の3学年の生徒(当時)と共に制作した映画「断層紀」を生徒たちに見せ、映画制作の魅力について話してもらいます。映画を身近なものとして生徒たちに感じてもらい、故郷が持つ価値や多様な側面について考えます。

 


第27回目の芸術家派遣事業は、講師に映画作家の波田野州平さんを迎えました。会場となった体育館に全校生徒が集まりました。波田野さんは2013年に大館市にゼロダテのレジデンスアーティストとして滞在し、映画「断層紀」を制作しました。「断層紀」は現地で出会った個人の伝記や昔のフィルム、小さな村に残る祭などを調べ、エッセイのように映像が編まれています。また、現地に住む女子中学生「ユキ」が日常を撮影した映像も織り込まれ、2人の視点が交錯します。大館に縁のある映画「断層紀」は生徒たちに何を感じさせるのでしょうか。
授業では「断層紀」を全編上映しました。映画はモノクロームの映像と、波田野さんのナレーションから始まります。「私の祖父、波田野源一郎はある日突然姿を消した。」「私」は祖父が生まれた大館という地を訪れ、自分のルーツを辿ります。過去の映像や古写真などの記録媒体、凄惨な事故や飢饉についての伝承や、篠村三之丞さんへの取材記録—波田野さんがフィールドワークを通じて捉えた「大館」という場所の姿が、映像と語りによって浮き彫りになっていきます。
波田野さんの視線はモノクロームの映像で描かれていますが、対照的にユキはカラーの映像で自分の目に映る日常を描き出します。友達との川遊び、日記を記す自分の手元、車窓から見える風景。ユキが紡ぎだす言葉と映像には、時折周囲に対して抱いている閉塞感や疎外感が垣間見えます。スクリーンにはモノクロの映像とカラーの映像が交互に映し出され、往復書簡のようなやり取りが続きます。

27hatano02 27hatano03 27hatano04

映画の上映が終わり、波田野さんの講話が始まりました。「術(すべ)」をキーワードに、自身の「芸術」と「芸術家」についての考えを話し始めました。波田野さんは芸術について、自分の感じ方を「術」をもって表に出すこと、と話し、『断層紀』を「目に見えない『兆し』」を「映像という『術』を使って表した」として振り返ります。また、レジデンス中に大館で出逢ったユキと篠村三之丞さんの姿や言葉に美しさを感じたことなど、映画製作の契機や経緯について説明しました。2人を通じて感じ得た、ものごとには色々な側面があり、またそれに対する見方も色々あることなどを生徒たちに語ります。考え方や見方が多様にあることを「豊かさ」として肯定的に捉え、映画のテーマにしたことも明かしました。また、映像と語りによって表されたユキの考えもまた、1つの見方であることを強調します。
講話後には生徒から多数の質問が出ました。「『断層紀』というタイトルはどのようにしてつけたのですか?」という質問に、波田野さんは「層のように折り重なっている」「外から来た人と内側にいる人の見え方の違い」を表す意図があったと話します。ある生徒は「ユキさんを出演者として選んだ理由は?」と質問しました。それに対して波田野さんは2年前に大館市立第一中学校を訪れた際に、当時中学3年生であったユキから映画に関わりたいと申し出があったことを話します。この波田野さんの答えを皮切りに、積極的に挙手をする生徒が少しずつ増えてきたように感じました。授業が終わった後も波田野さんに声をかける生徒が多く見られました。なかには自分の夢を伝え、アドバイスを求める生徒もいます。熱っぽさを帯びる1人1人の真っすぐな眼差しの先に、2年前に波田野さんに話しかけたユキの姿が見えてくるような気がしました。

27hatano05 27hatano06 27hatano07


講師略歴
1980年鳥取県生まれ。洋邦ミュージシャンのライブ撮影を数多く行い、ナイトピープルシリーズとしてウェブにて次々と発表。ジャドフェア&テニスコーツの日本ツアーを記録したドキュメンタリー「Enjoy Your Life」が2012年に全国を巡回上映。
初の長編劇映画「TRAIL」(2012) が渋谷ユーロスペースを皮切りに、全国の劇場を巡回上映。東京・立川でアートスペース「ギャラリー・セプチマ」を運営している。2013年にゼロダテのレジデンスアーティストとして、大館市立第一中学校の生徒とともに「断層紀」を制作。