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中村政人/秋田県立大館鳳鳴高等学校

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日時・参加者
平成28年1月9日 8名/美術部
内容
卒業生である講師がアーティストになった経緯やこれまでの活動、作品などについてレクチャーをする。レクチャーの内容とともに「5W2H」の考え方をベースに、生徒たち自らが展覧会の企画を立てるワークショップをおこなう。

 


第31回目の芸術家派遣事業は講師に中村政人さんを迎え、秋田県立大館鳳鳴高等学校の美術部の生徒を対象におこなわれました。中村さんはこの学校を卒業しており、授業に参加した生徒にとっては先輩に当たります。
授業冒頭に参加した生徒と中村さん、双方の自己紹介がありました。この日生徒は1人1作品を用意し、自分で制作した作品について、その制作動機やコンセプトについて話しました。自分の好きなモチーフや世界観…生徒たちは生き生きと目を輝かせながら話をします。中村さんは自身が美術の道を志すまでを振り返りました。大館で過ごした小学生から高校生時代、学校での勉強や美術部での活動を通じて、徐々に「自分は美術が好きだ」と意識し始めたと言います。中村さんの話で印象に残ったのは、美術室に入ることがわくわくするような特別な空間に入ったように感じられるとともに、「外につながっている」という感覚になったというエピソードです。この「外につながっている」という感覚が大事なものである、と中村さんは強調しました。そして現在に至るまでに制作活動を支える「イメージする力」と「構想する力」から成る「具現化する(見せる)力」について話し始めました。この力はどのような仕事にも応用が利き、それは人の力を見ること、つながりを大事にする社会をつくるものだと説明します。コンビニエンスストアの看板やマクドナルドのサインなどの記号をモチーフにし、社会に流通する資本の批評性を問いかけるような作品や、ハードとソフトの関係を題材にしてまちなかで展開された《秋葉原TV》など、これまでの作品を紹介しました。

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中村さんは自身が手がけてきたアートプロジェクトの運営の流れ、方法に沿って、展覧会やイベント作りの流れを説明し始めました。今回は最初の段階として「1. ビジョンを立てる」「2. メンバーを集める」「3. ブレストし、企画を立てる」「4. 企画書を作成する」を中心にレクチャーをおこないました。今回のワークショップでは「3. ブレストし、企画を立てる」のプロセスを体験します。中村さんは企画立案の必須項目として「5W2H」を挙げました。
5W…Who(誰が) What(何を) When(いつ) Where(どこで) Why(なぜ)
誰が展覧会をつくるのか?何を展覧会にするのか?
いつ展覧会を開催するのか?
どこで展覧会を開催するのか?
なぜ展覧会をしなくてはならないのか?

2H…How(どのように)How mach(いくらで)
どのように展覧会をするのか?
いくらで展覧会をつくるのか?

3人で1グループを作り、計3グループが展覧会企画を立てました。早速全員でブレインストーミングを開始します。自分が抱く興味関心をコンセプトに反映させる生徒や、事前に自分の考えを文章にしてノートにまとめてきた生徒もおり、各グループの話し合いは盛り上がりを見せました。15分間が過ぎたところで中間発表をしました。
・秋田犬をテーマにしたマスコットの展覧会
・ファンタジーや民話の世界観に犬や猫のキャラクターを絡めた展覧会
・学校のトイレを会場にし、テーマは限定せず、メインで使う画材を統一する展覧会
以上の3案に対して、ブラッシュアップのために中村さんがアドバイスをしていきます。より具体的に予算を考えることや、会場の構成の仕方、観客の動員の仕方など…5W2Hのディテールを詰め、企画をより具体的に考えることを促しました。生徒たちはアドバイスをもとに企画を再考し、話し合いを再開しました。
そして最終発表。最初のグループは、展覧会の巡回や開催時期の設定など、より詳細な概要を発表しました。また図録やグッズなどについても考えたようです。これに対し中村さんは「観光的PRのアイディアのひとつになる」とコメントしました。2番目のグループは、展示場所を屋外とし、また展示する際には音楽を使いたいなど、感覚に訴えかけるような展覧会イメージを膨らませました。中村さんからは「メインビジュアルやキーワードを企画書に盛り込んでは?」と企画書そのものの構成についての提案がありました。最後のグループは来場者が限定されないようにとの考慮から、開催時期を夏休みに設定するとともに、男性用と女性用それぞれに設置された作品の展示替えのアイディアを発表しました。中村さんは「おおいたトイレンナーレ」などを参考例に挙げ、ユニークな発想を更に活かせるように中村さんが助言を与えます。
ワークショップ後、中村さんは「価値」について話しました。スクリーンには価値をなす5つの力「人間力」「しくみ力」「自立力」「環境力」「美感力」のバランスを描く5角形のレーダーチャートが映し出されました。このバランスを取るために他と恊働しそれぞれの力を補い合うことは、「価値と価値の隙間を創造する」ことであると中村さんは話します。
授業の最後に中村さんは、ある提案をしました。それは今春にゼロダテアートセンターにて大館鳳鳴高校の美術部員による展覧会を開催するという企画です。生徒たちは少し驚きつつも、期待を膨らませるように目を輝かせていました。展覧会はもとより、生徒たちの手による企画書を読む日がとても楽しみです。

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講師略歴
1963年秋田県大館市生まれ。東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業し、同大学の大学院美術研究科絵画専攻壁画を修了。弘益大学大学院西洋画科修士課程卒業。2003年より東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻の准教授を務める。「社会」や「教育」における美術の在り方を問いかけ、地域に活動の場としくみを生み出す実践を重ねる。第49回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2002年)日本代表。1998年よりアーティスト・イニシアティブ・コマンドNを主宰。2005年、アートスペース「KANDADA」(神田)での活動を経て、2010年から文化芸術施設「3331 Arts Chiyoda」(東京都千代田区)の統括ディレクターを務める。2007年より秋田県大館市にてゼロダテアートプロジェクトをおこなう。