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中村政人/大館市立東中学校

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平成28年1月12日 11名/美術部
内容
卒業生である講師がアーティストになった経緯やこれまでの活動、作品などについて説明する。また、生徒が制作した1人1作品に対して、生徒たちとともに作品から受ける印象や感想、考察を話し合う対話形式の講評をおこなう。

 

 


第32回目の芸術家派遣事業は講師に中村政人さんを迎え、大館市立東中学校の美術部の生徒を対象におこなわれました。中村さんはこの学校を卒業しており、授業を受ける生徒にとっては先輩に当たります。
冒頭に中村さんは絵について「今しか思わないことを伝える方法」と表現しました。描いたそのとき、そのときのメッセージを絵に閉じ込めておき、残しておけるもの。そして時を置いてから振り返ることで、当時のことを思い出し、そのときに抱いていた気持ちを伝えられるものだと話します。また中学生時代を振り返り、美術室に入る瞬間にはわくわくする気持ちがあったと中村さんは言いました。イメージは広がる、伝わるものであり、それは自分の身の回りだけでなく、たとえば海外であっても外の世界につながっていくものだと話します。絵を描く…想像する/構想する力は派生するパワーであるという中村さんの話に、生徒たちは真剣に耳を傾けます。
将来についてどんなことを考えているか、中村さんが生徒たちに尋ねました。バレエを習っているという生徒は、将来ダンスや演劇をやりたいと話します。「今後はどうやって勉強していくの?」中村さんは質問を交え、生徒と対話します。本物の演劇やダンスに触れるべきだよとアドバイスし、かつて自分が大館市の正札竹村百貨店内のギャラリーで展覧会を見に行って本物の作品に触れたエピソードを話しました。そのほか、イラストレーター、もしくはグラフィックデザイナーになりたいという生徒がいました。これに対して中村さんはイラストレーション、デザインともに、「自分の絵を描く」という意味で広く捉えることを勧めました。絵を描くことを基本とし、仕事に乗るために道具を使えるようにする、他の分野の人と協力して仕組み(プログラム)を作るなど、必要な要素について話しました。

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この日の授業に生徒は1人1作品を持参しました。その作品を見た感想や印象を、3段階に分けて話すよう中村さんが生徒たちに促しました。それぞれの考えを言葉に出して話し合うことで、自分の中のイメージを豊かにすることを目指し、目に見えるものから受ける「第一印象」と「連想されること」、作品から感じられた「目には見えないもの(想いやメッセージ)」を発表し合います。
11人の生徒が用意したスケッチブックや画用紙を中村さんは手に取ります。自分がコメントをする前に、この絵にはどんな印象を抱くかを生徒に聞いていきます。
ある生徒が描いた絵について、生徒たちが感想を述べていきました。流線で描かれる形や、具象的なモチーフ、中間色を多用した彩色など…各々が感じた印象を生徒たちは話し合います。画面でひときわ際立つ「目」のモチーフについて、なぜこれを描いたのか質問しました。描いた生徒は「目には感情が表れるものだと思う」と、その理由を話しました。中村さんは絵の具を用いた制作や、画用紙だけではなく別の支持体を使うことを勧めました。それにより遠近感や質感が現れ出る、と話しました。
ある生徒は縦笛の鉛筆デッサンを見せました。鉛筆のみの描線で忠実に表現されています。細い線が重なり合い密集し、量感や立体感を出しています。この作品を見た中村さんは「時間の重なりや厚みが感じられる」とコメントしました。白を使わず黒い線、色だけで別のモチーフも描いてみては、とアドバイスをしました。

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中村さんは自身が高校生のときに描いた作品や、留学後に発表されたインスタレーション作品やプロジェクトを紹介しました。日常の風景から切り取られたモチーフや、まちの中で作品を感じることができる仕掛けなどが映し出されたスクリーンに、生徒たちのまっすぐな視線が注がれます。
授業の最後に中村さんは点数で表現できない人間力、コミュニケーション力の必要性を強調しました。それはどのような仕事にも応用が効くものだと話します。印象的だったのは「自分は自分でつくる」という言葉です。この言葉は授業を通じて中村さんが伝えた「絵を描く」という行為から拡がってなし得ることだと思います。今後、生徒たちはそれぞれ自分の中にある夢や目標、イメージを、どのような絵を描きながら広がっていくのでしょうか。

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講師略歴
1963年秋田県大館市生まれ。東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業し、同大学の大学院美術研究科絵画専攻壁画を修了。弘益大学大学院西洋画科修士課程卒業。2003年より東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻の准教授を務める。「社会」や「教育」における美術の在り方を問いかけ、地域に活動の場としくみを生み出す実践を重ねる。第49回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2002年)日本代表。1998年よりアーティスト・イニシアティブ・コマンドNを主宰。2005年、アートスペース「KANDADA」(神田)での活動を経て、2010年から文化芸術施設「3331 Arts Chiyoda」(東京都千代田区)の統括ディレクターを務める。2007年より秋田県大館市にてゼロダテアートプロジェクトをおこなう。