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湊哲一/能代市立能代第二中学校

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平成28年2月1日 85名/3年生
内容
地元出身の講師が、自身の活動や能代が木都であることの意義を説明し、地域の青森ヒバを使用した箸づくりワークショップをおこなう。授業では昔から使用されている鉋などの大工道具をレンタルし、実際に使用することで、ものづくりを通して木やふるさとについて様々な観点から体験し学ぶ。

 


第37回目の芸術家派遣事業は講師に湊哲一さんを迎え、ご自身の出身校である能代市立能代第二中学校で実施されました。今回の授業参加者は3学年の全生徒です。授業は3回に分けて1クラスごとおこなわれました。湊さんと、アシスタントの宮薗なつみさん、高橋紗代さんは、授業で使う道具や材料を作業机に並べ、生徒たちを待ちます。
準備が完了した美術室に生徒たちが続々と集まります。チャイムが鳴り、授業が開始。授業のはじめに、湊さんはこれまで手がけた仕事や作品などを、スライドとともに紹介しました。自身が営む注文家具屋「MINATO FURNITURE」で作られた家具の写真がモニターに映し出されます。1人掛けの椅子や棚、TV台等、家具は全て木製です。湊さんはそれぞれの家具の特徴や、素材となる木の種類について説明しました。中にはアフリカから来た木材もあるそうです。また、釘を使わず木材を組み立てた「組み木」など、製作技法についても説明があります。
湊さんが手がける仕事は家具だけではありません。岩手県陸前高田市の「KUMIKI PROJECT」では、木材ブロックを使い、集会所などのコミュニティスペースを作っています。また、ゼロダテと協力して始めた、「WAPPA PROJECT」の製品も見せてもらいました。大館の工芸品である曲げわっぱを使った時計や鏡、端材を使ったブローチ「CHIGIRI」を見た生徒たちから歓声が上がります。湊さんは家具を作り始める前は、インテリアデザインの会社にいたそうです。デザインを提示するための、CGイメージをいくつか映し出し、これが現在の仕事にも活きていると話します。注文主からのオーダーを受けた際に、そのプランを具体的に提案することに役立っているそうです。その他、各地の伝統工芸品とのコラボレーションなど、多岐にわたる湊さんの活動の話に、生徒たちは真剣に耳を傾けます。

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ワークショップでは、生徒たちも木を使ったものづくりに挑戦します。今回作るのは、箸です。素材として選んだ青森ヒバは、能代の伝統的な工芸品である能代春慶で使われているのと同じ木材です。生徒たちは素地のままの木材を手にし、ワークショップの説明を聞きます。今回の授業は鉋を使うのですが、使用経験のある生徒はいるのでしょうか?湊さんが尋ねてみました。3クラス46名のうち、経験があるのは2名だけでした。生徒たちに向け、湊さんは鉋の持ち方や手の動かし方、刃先に関する注意など、細かく指導していきます。その手元をじっと見る生徒たち、ワークショップが開始するとすぐに作業を開始しました。まずはガイドとなる木の型に箸を収め、鉋がけをします。最初はおずおずと手を動かしていた生徒たち。「勢いをつけて削るんだよ」という湊さんらのアドバイスを受け、次第に作業スピードも上がり、机の上にはあっという間に鉋屑の小さな山が出来ました。教室に鉋屑のほんのりと甘い香りが漂います。鉋で削った後は、ヤスリがけをしていきます。作業中に湊さんが、「一咫(ひとあた)」について説明しました。一咫とは親指と人差し指で直角を作った際に、それぞれの指を結んだ長さのことです。自分の手の大きさに合った箸の長さは一咫×1.5倍(一咫半)という昔からのいわれに倣い、自分の「一咫」を測って箸の長さを調節します。箸の先端から一咫半のところに鉛筆で線を引き、ヤスリがけが終わった生徒は、湊さんに一咫半の長さにカットしてもらいました。切り口を中心にヤスリを再度かけ、いよいよ仕上げの塗装です。湊さんは箸の塗装のために「蜜蝋」を準備しました。ウェスに蜜蝋をつけ、箸に塗っていくと、箸は次第に黄味を帯び始めます。蜜蝋には透明感があり、素地の木目が透けて見えます。塗装を終え、完成した箸を手にする生徒たちの表情は、何とも嬉しそうです。紙に箸を丁寧にくるんで、「家族に見せる!」と話す生徒もいます。「今日の給食はこれで食べたいな」という声も聞かれました。

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一膳の箸を手にする生徒たちの笑顔を見ていると、前半の講話で触れられた「いただきますの日プロジェクト」が思い出されます。「いただきますの日」は11月11日−−横に並ぶ二膳の箸の姿からイメージしたそうです。湊さんのお話を聞いていると、人と食のつながり、食卓をともにするひととの関わり合い…一膳の箸と「いただきます」の言葉が生む関係性が、輪のように広がっていくのが感じられました。

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講師略歴
1977年秋田県能代市に生まれる。1996年大学入学の為上京。2000年建築系の専門学校に入学。2002年に株式会社ヴィンチに入社し、おもにインテリアの設計、デザインを行う。2005年に注文家具屋「MINATO FURNITURE」を設立。開催した展示会に2006年「寺家7 木工芸家7人展」(あざみ野アートフォーラム)、2007年で行われた「アート&クラフト寺家回廊」(横浜市青葉区寺家町)、2008年「寺家7 木のある暮らし」(あざみ野アートフォーラム)など。2009年に個展「MINATO FURNITURE作品展 色々な家具たち」開催。2014年の「大館・北秋田芸術祭」では旧浦田小学校にて間伐材を使ったフォトフレーム制作のワークショップをおこなう。